最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)1538号 判決 1949年6月29日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人得田耘の上告趣意第一點について。
上告は舊刑訴第四一五條に規定する場合の外は、原判決の法令違反を理由とするときに限りすることができるのである。(舊刑訴第四〇九條、刑訴應急措置法第一三條第二項)そして右法令違反の有無は原判決言渡の時の事実を基準として決定すべきもので、その後に生じた事実までも斟酌して決定すべきものではない。このことは舊少年法第八條を適用すべきか否かについても同様である。本件においては、被告人は原判決言渡當時一八歳未滿であったことは明白であるから、原判決が舊少年法第八條を適用して不定期刑を言渡したのは正當であり、その後被告人が滿一八歳に達した事実があるからといって、原判決に法令違反があるということはできない。それ故論旨は理由がない。
同第二點について。
舊少年法第八條の不定期刑の場合でも自由が制限される限度即ち長期及び短期は裁判所の言渡す宣告刑で定まっているのであって、この宣告刑の執行に關する一態様として行政處分によって假の釋放が行はれるのである。舊少年法第八條による假出獄も刑法第二八條による假出獄も行刑機關による行政處分たる性質に異る所はない。所論のように舊少年法に基く假出獄を以て司法的行爲というのは誤りである。
本件について見ると、被告人が舊少年法第八條に基く刑事處分に處せられたとして、將來假出獄によって釋放されるとしても、それは被告人の利益にこそなれ、その利益を侵されることにはならないばかりでなく、その假出獄がその場合に適切でないか否かは本件における現実の問題ではないのである。かかる理由なき假説を主張する論旨は採用することをえない。(その他の判決理由は省略する。)
よって舊刑訴法第四四六條に則り主文のとおり判決する。
右は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)